子どものコロナワクチン接種率はどうして低いのか?
ワクチンをためらうことのことを、Vaccine Hesitancyといいます。
ワクチン接種する人たちと全くワクチンをしない(反ワクチン)とはきれいに分かれているのではなく、中間のある「連続体」です。
https://www.know-vpd.jp/news/Hesitancy.php
日本で子どものコロナワクチン接種率は低めです(世田谷区も…)。
今西先生のアンケートによると、ワクチンをさせていない保護者の多くは完全な反ワクチンというわけでもなく、上の図で言う中間に存在する方ということです。私もその考えに賛同します。
「かかりつけ医が…」子どもコロナワクチン接種、1026人親の声からわかったこと
https://gendai.media/articles/-/98996?imp=0
それではどうしてコロナワクチンの接種率が低いかというと、これはWHOが発表した3Csモデルで説明できると思います。WHOは、多くの
人がワクチンの接種をためらう大きな原因として、「VPD(ワクチンで防げる病気;VaccinePreventable Diseases)リスクに対する独りよがりの安心感(コンプラセンシー Complacency)」、「ワクチン接種に対する障壁(コンビニエンス Convinience)」、「予防接種に対する信頼(コンフィデンス Confidence)」の3つを挙げています。
また、拙書から引用させてください。
コンプラセンシーというのは、「VPDにはかからないからワクチンは不要」などという独りよがりの安心感・自己満足を示しています。ワクチンなどによってVPDが減っているのに、VPDの感染リスクを低く見積もり予防の必要性を認識してない状態です。
コンビニエンスというのは本来便利という意味ですが、ここでは逆にワクチン・ワクチン接種への障壁を表します。日本では必要なワクチンのすべては定期接種に位置づけられていませんし、日本独自のルールでワクチンがすぐには受けられないこともあり、とうてい便利とは言い難い状況です。
コンフィデンスというのは、予防接種に対する信頼感です。ワクチンの有効性、安全性はもちろん、ワクチンメーカーや行政などのワクチンをすすめる側への信頼が損なわれたときに、接種率は低下します。
小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK 疑問や不安がすっきり!
p.172-3
新型コロナワクチンでいうと、コンプラセンシーとは、「子どもはコロナにかかっても軽症だから、ワクチンは不要」という考えです。実際、某地域のローカルテレビ局の番組でそういった報道がされたせいか、その地域の子どものワクチン接種率は大きく低下しています。
日本小児科学会も、このワクチンについて推奨を出すために時間がかかったことも関係しているかもしれません。
コンビニエンス(ここでは不便)は、コロナワクチンの特殊性によるものが多いです。子どもの新型コロナワクチン(Pfizer)は、前準備が煩雑なので人手が要ります。未だに日本ではインフルエンザワクチン以外は接種間隔の縛りがあり、定期接種を行っている子どもたちのスケジューリングで注意する必要があります。ロジスティクスにも問題があり、今のところクリニックが注文できるのは月一回だけで、すぐには来ません。
そのため、ワクチンの接種日のスケジュールが立てにくいのです。
コンフィデンスでは、やはり前述の某地域のローカルテレビ局はワクチンに不信を抱かせる報道を繰り返しており、接種率の低さに関係しているのではと思います。また、大人のコロナワクチンによる発熱等でつらい思いをした保護者には、子どもは翌日休ませられないし、子どもにはそういった思いをさせたくない、という思いもあるようです。
対策は?
一番は国がワクチンについてビジョンを持ち、国民に知らせることです(現政権は…)。
長期的には、ワクチン自体や制度の改善で、接種しやすい環境を作ることでしょう。6m-4yの新型コロナワクチンが認可されても、現状では接種を行うことは困難でしょう。
短期的には、地域で明確なビジョンを持ったリーダーの存在です。
港区では、今年の夏に子どもたちに集中的な集団接種を行いました。小児でのワクチンの重要性を理解した人がある程度のボジションにいないと出来ないことです。夏休みというボーナスタイムに、行えたのは良かったと思います。
また、鹿児島県医師会は子どもを守るためワクチン早期接種を強く勧めると緊急声明を出しました。
新型コロナ 子ども守るため「ワクチン早期接種を強く勧める」 5~11歳は2回目、12~19歳は3回目を 鹿児島県医師会が緊急声明
https://373news.com/_news/storyid/161618/
ポイントは、鹿児島県医師会会長が小児科医であることと、会見を開いた西順一郎委員はもともと小児科医で鹿児島大学感染防御学講座 教授でもあり、またヒブワクチン・小児肺炎球菌ワクチンの有効性を示した「鹿児島スタディ」の主催者でもあるということです。
また、マスコミなどが正しい報道をしてくれないと、最終的には子どもたちのためにならないでしょう。
以前のブログを引用します。
一連のマスコミの対応について、調べている人もいます。
新聞はHPVワクチンをどう報じたか
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamaguchihiroshi/20210917-00258658
メディカルトリビューン2019年06月07日の記事です。
https://medical-tribune.co.jp/news/2019/0607520328/
第10回日本プライマリ・ケア連合学会(5月17〜19日)の「HPVワクチンシンポジウム」において、中日新聞編集局編集委員の安藤明夫氏はHPVワクチンをめぐる報道の変遷を示し、「HPVワクチンの意義を含めた啓発情報を伝えきれなかった報道機関には責任があり、反省すべき不作為が今も存在する」と述べた。
安藤氏は、医療関係者にもコメントしています。
「副反応騒動の過程で、適切な啓発情報を伝えることができなかったのは報道機関の責任。今や積極的に取り上げる記者が少ない点も反省すべき"不作為"。一方で、医療者の側にも患者を守る上で、さまざまな"不作為"があったのではないだろうか」と同氏は言う。
マスコミの不作為を問題にするなら、小児科医を含めた医療関係者の不作為も取り上げないといけないですね。
しかし、応時(2018年ごろ)あれほどHPVワクチンが無効だとか危ないとか言っていたマスコミも「識者」も随分と静かですね。
重ねて書きますが「悪いのは全部◯◯のせい」や「一億総懺悔」など、責任の転嫁や希釈化をするのであれば、また同じことがおきるのかな、とは思います。
というわけで、新型コロナワクチンでも、程度の差はあれ同じことが起きるのでしょう。
https://www.karugamo-cl.jp/index.php?QBlog-20220510-1
結局同じことが某地域で起きているようです。
結論としてはワクチン接種が低い理由を保護者に求めるのではなく、国や地域の責任ある人が明確なビジョンを示し、マスコミも正しく伝える必要があるのでしょう。