パキロビッドについて(2023-01-03現在)

今年もよろしくおねがいします。

現在第8波の真っ最中です。アメリカでは、より感染力の強い株が流行していることもあり、注意が必要ですね。

現在のところコロナに感染したら、基本的には解熱鎮痛剤などで自宅療養です。しかし、基礎疾患などがあれば、新型コロナウイルス感染症の治療薬の適応になります。

現在小児でかつ内服薬で使用でき、なおかつ国際的に認められているのは、パキロビッドのみです(12歳以上で体重40kg以上)。私もこれまでに処方したこともありますが、今後も使用が見込まれるため、記載しておきます。

適応について

COVID-19 に対する薬物治療の考え方第 15 版からの引用です。

次に掲げる重症化リスク因子を有する者が、本剤を投与する意義が大きいと考えられる。
・ 60 歳以上
・ BMI 25kg/m2 超
・ 喫煙者(過去30 日以内の喫煙があり、かつ生涯に100 本以上の喫煙がある)
・ 免疫抑制疾患又は免疫抑制剤の継続投与
・ 慢性肺疾患(喘息は、処方薬の連日投与を要する場合のみ)
・ 高血圧の診断を受けている
・ 心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作、心不全、ニトログリセリンが処方された狭心症、冠動脈バイパス術、経皮的冠動脈形成術、頚動脈内膜剥離術又
は大動脈バイパス術の既往を有する)
・ 1 型又は2 型糖尿病
・ 限局性皮膚がんを除く活動性の癌
・ 慢性腎臓病
・ 神経発達障害(脳性麻痺、ダウン症候群等)又は医学的複雑性を付与するその他の疾患(遺伝性疾患、メタボリックシンドローム、重度の先天異常等)
・ 医療技術への依存(SARS-CoV-2 による感染症と無関係な持続陽圧呼吸療法等)、

https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_drug_221122.pdf

ただし、上記の疾患があれば全員処方すべし、というわけでもありません。
処方の優先順位についてはワクチンの接種歴によっても変わることがあります。

薬の飲み合わせについて

パキロビッドは合剤です。含まれているリトナビルは有効成分の血中濃度を維持する作用がありますが、他の薬にも影響があります。そのため、日本では併用できない薬が非常に多いです。
お薬手帳をご持参ください。

 参考

パキロビッドの薬物相互作用検索ツールです(医療関係者専用)。
https://www.covid19oralrx-hcp.jp/interactions-finder#

腎機能について

腎臓で代謝される薬で、腎臓の機能を事前に知ることが必要です。検査結果(クレアチニン)などがありましたが、ご持参ください。
https://jsnp.org/egfr/

副反応について

今まで重篤なものが特に多いとは報告されていません。飲んで血中濃度が高いと思われれているときに、口の中が苦くなった、という方はいます。

添付文書などを御覧ください。

https://www.pfizermedicalinformation.jp/ja-jp/patient/%E3%83%91%E3%82%AD%E3%83%AD%E3%83%93%E3%83%83%E3%83%89-%E3%83%91%E3%83%83%E3%82%AF?tab=faq

なお、バイデン大統領も経験したと言われる、コロナの症状が再燃する「リバウンド」ですが、実際のところはまれだそうです。

コロナ経口薬の「リバウンド」発生はまれ
https://medical-tribune.co.jp/news/2022/1219548500/

処方について

特例承認を受けた薬であり、現在のところ日本では一般流通は許可されておらず、供給は厚生労働省による管理下にあります。使用を望む医療機関は「パキロビット登録センター」に登録申請を行う必要があります。
処方を希望する場合、同意書が必要です。

そのため、色々とご不便をおかけすることもあります。

オンライン処方について

「新型コロナウイルス感染症における 経口抗ウイルス薬 (パキロビッド ® パック) の医療機関及び薬局 への配分 に ついて」にはオンライン診療について以下の記載があります。

SARSーCoV 2 検査が陽性であったが、結果説明及び治療方針説明をオンラ   
イン・電話診療等で実施している等、同意書の取得が困難な場合には、病状説明を実施した医師が患者から口頭にて同意を取得した上で、その日付とともに診療録に明記してください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000994438.pdf

ただし状況により、かかりつけ医での処方をお願いすることもあります。

おまけ:アメリカでの処方事情

アメリカもコロナでは大変なことになっていますが、パキロビッドは比較的カジュアルに処方されているようです。

また、米国感染症学会による、パキロビッドとの薬の飲み合わせについても、日本とはだいぶ異なります。
https://www.idsociety.org/practice-guideline/covid-19-guideline-treatment-and-management/management-of-drug-interactions-with-nirmatrelvirritonavir-paxlovid/

日本ではパキロビッドの処方が非常に少ないです。
コロナ治療薬は日進月歩であり、今後子供にもつかえる薬が他にも出てくるとは思いますが、現状のパキロビッドももう少し使いやすくしてほしいとは思います。

最後に

数は今の所少ないのですが、日本でも決して無視できない小児での死亡報告があります。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2559-cfeir/11727-20.html

基礎疾患のないお子さんも亡くなっています。感染者数が増えれば、残念ながら亡くなるお子さんも増えることでしょう。

現在のところパキロビッドは12歳以上の適応となっていますが、もっと若い人たちに処方できる薬がほしいですね。