「《声明》基礎疾患のない幼児にマスクは不要」は正しいか?

こども環境学会というところから、「《声明》基礎疾患のない幼児にマスクは不要」という声明が出ました。

https://www.children-env.org/blogs/blog_entries/view/54/4c44076e2d260dde61c7ff37d4aa086b?frame_id=63

読んでみたのですが、明らかにおかしな点がいくつか有るので、紹介しようかと思います。

参考文献リストがない

 学術論文や学会の声明では、論点の支えとなるものが必要です。その多くは、文献です。そして文献は誰もが分かるように「参考文献リスト」として提示する必要があります。

 例えば、先日紹介した日本小児科学会の「生後6か月以上5歳未満の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」には、合計18もの参考文献リストがあります。

http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=466

しかし、こども環境学会の声明では一切ありません。

「現在流行中の新型コロナウイルスは明らかに弱毒化し、患者を死に至らせる危険性は季節性のインフルエンザウイルスと同等ないし、やや強い状態にまで低下していると考えられます。」
「コロナ禍の下で育つ乳幼児の発達が遅れているとの報告も見られ、成長・発達する幼児にとって、マスクの長期的着用は幼児の心理、社会性の発達を阻害することが危惧されます。」
「コロナ禍の下で育つ乳幼児の発達が遅れているとの報告も見られ、成長・発達する幼児にとって、マスクの長期的着用は幼児の心理、社会性の発達を阻害することが危惧されます。」

などについては、参考文献を挙げて、正当性を問う必要があるでしょう。

特に
「基礎疾患を有さない幼児にマスクの着用を推進しないことを提唱します。」
については、どうして基礎疾患を有する場合はマスクが必要なのか(基礎疾患の特性によっては、マスクできない場合もあります)、どうして、日本小児科学会などが推奨する2歳未満ではなく幼児(生後1歳から就学前までのこども)なのか、どうして小学生はマスクが必要なのか、など根拠が示されていません。

また、換気についての言及がないのも気になります。

ロジックが曖昧

前半で子どもでもコロナワクチンの重要性および接種率が低いことを指摘して、その後マスクが不要、となるロジックが不明です。

百歩譲って、子どもの接種率をもっと上げればマスクは不要になります、というのならわかりますが(もしあれば参考文献を付けてね)。

海外での情報を無視している

あまり知られていませんが、日本はそれなりに新型コロナをコントロールしている国です。

理由はいくつかありますが、マスクに言及している人もいます。

#BringBackMasks (マスクをもう一度つけよう)というハッシュタグがツイッターのトレンド入りにもなっています。

アメリカテキサス州に有るCook Children's Medical Centerでも、コロナ+インフル+RSのトリプルで、マスクを付けるように呼びかけています。
病院の玄関に大人子どもマスクを付けた看板が掲げられています。

「パーフェクトストーム」にならないために:今はマスクを外す時期ではない

もちろん私も不要なときにはマスクを外したほうがいいと思います。しかし、今はコロナの第8波が門前に迫っており、RS/インフルの動向も気になります。このような状況で、子どもたちのマスクを外せば、北米と同じようにパーフェクトストームが来ることは否定できません。

カリフォルニア州オレンジ郡では、コロナ+インフル+RSの「パーフェクトストーム」で医療非常事態宣言を出しているのです。
https://www.cbsnews.com/losangeles/news/orange-county-declares-health-emergency-due-to-rapidly-spreading-viral-infections/

パーフェクトストームとは元々映画化された小説の名前ですが、2008年に世界中で起きた米国の金融恐慌のことも指します。全世界に広がり非常に影響を受けました。
そのため、複数の厄災が同時に起こり、破滅的な事態に至ることをパーフェクトストームと言うようになりました。まさに「究極的な嵐」です。

記事の中から小児科医のメッセージを引用しておきます。

呼吸器系の病気から自分自身や子どもたちを守るために、私たちは、室内で他の人と一緒にいるときはマスクを使用する、病気のときは家にいるなど、パンデミック期間中に実践したことと同じことを続けていくことが大切です。