子どものコロナワクチン再び(2022-08-12)

注意:私は自治体のコロナワクチンについて携わっているわけではありません。また、私の見解は必ずしも私が所属している団体と必ずしも一致していません。

政府の動き

今まで子どもの新型コロナワクチンは、「接種勧奨はするけど、努力義務は課さない」というものでしたが、9月から努力義務を変わります。

以前も書きましたが、もう一度書いておきます。

接種勧奨:自治体への義務
努力義務:本人や保護者への義務

 つまり、自治体は対象者が接種できるように準備をする義務がありますが、本人や保護者についての接種は任意です。

 ちなみに「努力義務」は、明らかな「No」を提示しない限りは、「受けるよう努めなければならない(予防接種法第9条2項)」のです。

 9月からは、子どものコロナワクチンも、自治体の義務のみならず本人や保護者の義務も生じることになります。

 敷居を高く感じる人もいるかも知れませんが、子どもで行う定期接種(A類疾病)にも努力義務・接種勧奨が伴います。

日本小児科学会の動き

日本小児科学会は今までは健康な子供に対しては「意義がある考えています」と述べる程度でしたが、8月10日には、「5~17歳のすべての小児に新型コロナワクチン接種を推奨します」と方針を変更しました。

http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=451

HPVワクチンのときに何年も見解を出さず積極的勧奨再開表明もしなかった日本小児科学会にしては、非常に思い切った動きです。

変わった背景は?

 まずは子どもの新型コロナワクチンについては、全く変わっていません。変わったのは、評価です。有効性と安全性のデータが積み上がった他、第7波で重症化し、亡くなる子どもが出てきている危機感があるのでしょう。バズフィードの記事も参考になります。

https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/5-17-coronavaccine-jpeds

日本小児科学会 5〜17歳のすべての子どもに新型コロナワクチンを「推奨」と変更
日本小児科学会は、健康な子どもについて積極的には勧めてこなかった新型コロナワクチンについて、「5〜17歳のすべての小児に新型コロナワクチン接種を推奨します」という推奨に変更しました。有効性や安全性のデータが蓄積し、7波で子どもの重症者が増えていることが背景にあると言います。

 ネットなどを見てみると、専門家の間でも安全性や有効性の点で評価が割れているワクチンのように思えてしまうかもしれませんが、実際は違います。2月にも書きましたが、以前から安全で有効であるというのは共通の理解です。今回は更にデータが積み重なったのです。

https://www.karugamo-cl.jp/index.php?QBlog-20220223-1&mode=category&catname=%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9#content_1_8

 子どもにおいてはワクチンの意義は社会的要素が多く解釈は主観に寄ることが大きいので、意見が割れているように報道されてしまったのだと思います(賛否両論あったほうが、視聴率があがるのでしょうか?)。

ただし12歳以上のコロナワクチンは心筋炎のリスクが若干あがるので、より副反応の少ないファイザーを選び、接種後はしばらく激しい運動を控えても良いのではと思います。

日本小児循環器学会:新型コロナウイルスワクチン接種後の心筋炎について(2021年8月11日)
https://jspccs.jp/covid-19/families/vaccination-2/

その他気になったこと

「もう感染したから、コロナワクチン不要ですよね」

感染後もコロナワクチンは必要です。

自然感染の抗体上昇はワクチンよりも低いことがわかっています。ですので、感染後体調が回復していれば、本人・保護者の希望と医学的な禁忌がなければ、速やかに接種ができます。特に初回接種がまだの人は、早めの接種をおすすめします。

厚生労働省:新型コロナウイルスに感染したことのある人は、ワクチンを接種することはできますか。
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0028.html

子どものコロナワクチン接種の機会が少ない

せっかく子どものコロナワクチン接種をしようと決めても、お住まいの自治体によってはハードルが高いです。現在で接種勧奨とされているので、本来は自治体は子どものコロナワクチンも積極的に行う義務があるのですが。多くの自治体では接種の日にちが限られているため、スケジュールが難しいです。

ちなみに港区は、夏休み中に週に3回、集中して子どものコロナワクチンを行うようです。
https://www.city.minato.tokyo.jp/wakuchintan/child.html
夏休みというボーナスタイムに集中して接種できるのは、素晴らしいことですね。

ワクチンの接種率が低いとどうなるのか?

いま、第7波で、沖縄と大阪が大変なことになっています。
そんな中、三重大学の奥村先生がコロナワクチン接種率(3回目)と人口100万人あたりの感染者数の散布図を作ってくれました。

画像の説明
https://twitter.com/h_okumura/status/1557926936420028416

勿論医療体制など様々なファクターもありますが、接種率(3回目!!)と感染者数の相関関係はありそうです。秋田県や山形県・青森県など、東側の件は接種率が高く、感染者も少ないですね。

繰り返しますが、3回目です。2回だけでは、オミクロンには対応できません。

そして、大人のワクチン接種率は子供の接種率とほぼパラレルになります。

5~11歳ワクチン接種率は「東高西低」…最高は秋田45%・大阪は最低7%
https://www.yomiuri.co.jp/medical/20220809-OYT1T50355/

ちなみにこちらのアンケートは、青森・沖縄は含まれていないということです。

沖縄や大阪の子どもたちにしわ寄せが来ないように、願うだけです。

追加接種は?

12歳以上の方は3回目のワクチンを早めに済ませましょう。オミクロンに対抗するためには、3回目の接種が必要です。

そして、5-11歳で3回目のワクチンをどうするかは、まだ決まっていません。mRNAワクチンや新型コロナウイルスの特性からみても、ワクチンの抗体は少しずつ少なくなり、ワクチンは変化を続けます。対抗するためには、追加接種が必要でしょう。

さらに若いお子さんの接種は?

それから、今回あまり議論になっていないようでしたが、6ヶ月から4歳の新型コロナワクチンがどうなるか、気になります。RSやhMPVが流行していますが、もし今後インフルエンザが流行したら、お子さんはもっと大変なことになるでしょう。