福島の子どもたちと甲状腺エコー

私は以前から福島に何かと縁がありました。祖母の実家が福島でしたし、大学時代には福島に何度か足を運びました。

そして震災後も何度か言ったことがあります。震災直後は本当に瓦礫ばかりで、船は陸にあげられ、お墓もバラバラでした。電信柱も根本からなぎ倒され、津波の恐ろしさを知りました。

そして年を追うごとに復興していくのも感じました。

生まれてくる孫の被爆の影響がないか心配する人もいました。私が臨床遺伝専門医の資格を取ろうと思ったきっかけでもあります。

そんな中、「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)」がこんな会見をしました。

「原子放射線の影響に関する国連科学委員会」のメンバーらが19日、日本記者クラブで記者会見し、東京電力福島第一原子力発電所事故について「放射線 被曝ひばく を原因とする健康被害は認められない」とする解析結果を紹介した。

https://www.yomiuri.co.jp/science/20220719-OYT1T50202/
国連科学委、福島第一原発事故での「放射線被曝を原因とする健康被害は認められない」

もともと言われていたのですが(影響があったとしてもごくわずか)、改めて確認できた形です。最終的な結論になるでしょう。

ところで皆さん、福島の子どもたちはほぼ全員甲状腺エコーをしていることをご存知でしょうか?
そして「福島の子どもたちの間で、甲状腺の異常が多発」などと報道されてもいます。

でも、これはUNSCEARの結果と矛盾しますよね。

甲状腺エコーをしてみるとわかりますが、子どもでも甲状腺エコーで嚢胞などの異常が見つかることは震災前から度々ありました。
また、福島以外の地域の比較も行われており、福島で特に甲状腺の以上が増えていないことがわかっています。

甲状腺がんというとチェルノブイリ原発事故で、子どもたちの間で甲状腺がんが増えたというイメージがあると思います。しかし、福島原発事故とチェルノブイリ原発事故とでは、放射線の排出量はかなり違いがあります。

甲状腺エコーだけなら無害だからいいのでは、という声もあるかもしれませんが、過剰診断による弊害はすでに報告されています。

過剰診断で悲しむ人をゼロにしたい
福島原発事故の教訓から
https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2021/3408_01

子どもたちのことを考えるのであれば、遅ればせながらもそろそろ福島の甲状腺エコーは中止するべきでしょう。