子どもの新型コロナワクチン(5-11歳)(2022-02-23)
ようやくですが、日本でも子どもの新型コロナワクチン接種が始まります。早いところでは2022年2月からのようですが、世田谷区では今の所2022年3月からになります。
https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/fukushi/003/005/006/013/002/d00196452.html
子どもの新型コロナワクチン
副反応
子どもは社会の人身御供のために、接種するの?
以前書いたブログで、小児のコロナワクチンは個人のメリットというよりも、社会的要因(集団レベルの要因)が大きいと書きました。
https://www.karugamo-cl.jp/index.php?QBlog-20211225-2
これは「社会を守るために子どもを犠牲にせよ」というものではなく、「巡り巡って子どもたちにもメリットが有る」というものにするべきです。
副反応は大丈夫なの?
12歳以上のコロナワクチンで問題の一つは、心筋炎でした。特に10-20代の男性に多かったです。また、ファイザーではより頻度が低い事がわかっています。
子供のワクチンはファイザー製で、有効成分量は12歳以上の3分の1となっています。心筋炎の頻度も大幅に下がっています。
補足:ISRRとは?
ワクチンの成分そのものでなくても、予防接種のストレスが引き起こすと言われている反応です。Immunization stress related responses(予防接種ストレス関連反応)と言います。思春期にも多いと言われています。
対応法として原因を追求することを脇におき認知行動療法などでよくなる、という医師もいます。
https://www.asahi.com/articles/ASL2G5D4VL2GUBQU01J.html
参考
日本産婦人科医会
(3)ISRR 発症の素因となるリスク因子と対応
https://www.jaog.or.jp/note/%ef%bc%883%ef%bc%89isrr-%e7%99%ba%e7%97%87%e3%81%ae%e7%b4%a0%e5%9b%a0%e3%81%a8%e3%81%aa%e3%82%8b%e3%83%aa%e3%82%b9%e3%82%af%e5%9b%a0%e5%ad%90%e3%81%a8%e5%af%be%e5%bf%9c/
有効性・意義
ワクチンは有効なの?
子どもではワクチンの効果が低いのではないかというニュースが流れました。理由となった論文はこちらです。
Effectiveness of the BNT162b2 vaccine among children 5-11 and 12-17 years in New York after the Emergence of the Omicron Variant
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.02.25.22271454v1
ご存じの方もいると思いますが、これは査読を受ける前の論文です。査読を受けた論文はこちらになります。
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/71/wr/mm7109e3.htm?s_cid=mm7109e3_w
(MMWRは米国CDCが出している週報で、CDCが出している以上、一定度の品質があると思ってください)
詳しい解説はこちらです。
5-11歳のワクチン効果について色々盛り上がっているようなので、本腰を入れて解説します。
— 手を洗う救急医Taka「みんなで知ろう! 新型コロナワクチンとHPVワクチンの大切な話」2刷決定 (@mph_for_doctors) March 2, 2022
まずは結論から
・5-11歳に対するワクチン効果は低いが、1ヶ月で0%になるとは考えにくい
・ワクチン効果が負になっているのは解析の妥当性に問題あり
そもそも未査読論文に引っ張られ過ぎだと思いますね。
一応コメントしておくと、速報性の高い場合は査読がなくても素早く世に出す必要があるので、未査読の論文がすべて悪いというわけではありません。
「接種勧奨はするけど、努力義務は課さない」って?
厚労省の審議会で、5-11歳のコロナワクチンは「接種勧奨はするけど、努力義務は課さない」と出ました。一見するとわかりにくいですが、
接種勧奨:自治体への義務
努力義務:本人や保護者への義務
になります。
つまり、自治体は対象者が接種できるように準備をする義務がありますが、本人や保護者についての接種は任意です。
ちなみに大人は妊婦も含めて「努力義務」になります。これは、明らかな「No」を提示しない限りは、「受けるよう努めなければならない(予防接種法第9条2項)」のです。
なお、努力義務を課さないのは「医学的には」妥当だったかもしれませんが、厚労省は丁寧に説明する必要があったでしょう(下のコンテンツ参照)。
小児科医の間でもこのワクチンは、意見が割れているの?
HPVワクチンのときもそうですが、マスコミは0:100もしくは1:99で結論が出ていることでも、あたかも50:50であるかのように見せることがあります。
ただし、多くの真っ当な医療関係者は、子どものコロナワクチンについての、安全性・効果については共通した理解があります。それは、有効で安全性も高いということです。
承認のために申請された治験の成績を見ると、このワクチンは5~11歳の子どもに対する発症予防効果があり、成人よりもむしろ副反応の痛みや発熱も少ないので、安全性も担保できています。だからこそ承認されたのです。
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-okabe-21-1
ただ、子どもにおいてはワクチンの意義は社会的要素が多く解釈は主観に寄ることが大きいので、意見が割れているように見えているのだと思います。
ワクチンの安全性について真っ当な医療関係者の意見が割れている、という訳ではないでしょう。
それを理解しながらこの記事を読んでもいいと思います。
子どものワクチンどうする? 我が子にうつかどうか決める時、考えるべきこと
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-vaccine-5-11-years-old
各団体の認識は?
日本小児科学会:5~11歳小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方
http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=404
(アメリカなどの知見を受けて、2022/03/16に改訂しています)。
VPDの会:5歳から11歳の新型コロナワクチン接種の考え方
5歳以上の新型コロナワクチン接種を推奨します
https://www.know-vpd.jp/news/5-11mRNA.php
厚生労働省
5~11歳の子どもへの接種(小児接種)についてのお知らせ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_for_children.html
その他もろもろ
接種間隔はどうなるの?
お子さんの場合は、新型コロナワクチン以外にも各種ワクチンがあります。特に4月からはMR二期が始まることでしょう。
日本では「原則として、新型コロナワクチンとそれ以外のワクチンは、同時には接種できません。互いに、片方のワクチンを受けてから2週間後に接種できます」。
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0037.html
ちなみにアメリカではこのような縛りはすでに撤廃されています。
子どものコロナワクチンワクチンは、最低3週間です。
他のワクチンを接種する場合、このような図となります。
1回目が11歳、2回目が12歳になったらどうするの?
自治体などでも誤解を招く表現が見られますが、「2回目も1回目と同じ5~11歳用のワクチンを接種します。」
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0120.html
基礎疾患がある子どもはしないほうがいいの?
基礎疾患のあるお子さんに関しては日本小児科学会も接種を考慮すべきとしています。代表的なものとしては
- 慢性の呼吸不全(コントロール良好な喘息は除く)
- 重度の神経学的障害を持つ子
- 重度の先天性の心臓疾患
- 染色体異常症
- 小児がんや、その治療のために免疫の力が落ちている子
- 重度の発達障害
- 高度肥満
- 慢性の腎不全
- 肝臓障害
- 先天性の代謝疾患
- コントロールの悪い糖尿病
- 医療的ケア児
- 摂食障害(痩せが進行した場合)
などです。
http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=409
発達障害でコロナが悪化するというわけではなありませんが、マスクを付けらられないなど適切な感染防御が取れない場合は、接種をして感染のリスクを下げたほうがいいのでしょう。
ネットで色々危ない情報が出ているけど?
少し長いけど、宮坂先生のフェイスブックからです。
私は、反ワクチン派の方々の著作や論文も多数目を通しましたが、その主張の大部分はデータの裏付けのない仮説や強引な解釈です。科学コミュニティからはほとんど支持されていません。もちろんワクチンに慎重な意見も重要ですし、新型コロナにはいまだ解明されていない謎も数多く存在しています。予断を持つことなく、すべての可能性に真摯に向き合うべきです。ただし、そのためには確固たるデータの裏付けが必要であり、それをもとにした冷静な議論が必要です。
ひとたび反ワクチンの思考に凝り固まってしまうと、ワクチンの有効性を示すデータを見てもそれが信じられなくなってしまいます。なかには、科学者たちが発表するデータは製薬会社と癒着した科学者の捏造や陰謀だと考える方もいますが、そう考えると、私たちがいくら科学的なエビデンスを提供しても説得は不可能です。
https://www.facebook.com/masayuki.miyasaka.9/posts/4734078563382229
気になることは?
最近のオミクロン変異体では、子どもの感染が多くなって来ました。 園や学校で流行するたびに休園・休校を余儀なくされるのは、保護者だけでなく子どももストレスです。
あと、子どもでの感染が増えることで、後遺症も気がかりです。たしかに日本ではMIS-C/PIMS(川崎病に似た症状)は少ないです。しかし、後遺症は他にもあります。アメリカでは新型コロナで子供の糖尿病リスクが増えています。
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/71/wr/mm7102e2.htm
もう一つが、今後の新型コロナウイルスの変異です。今後、子どもにも至急に接種したほうがいいと思われる新しい変異が出てくるかもしれません(出ないことを望んでいますが)。
参考資料
厚生労働省: https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/child/
こびナビ: https://covnavi.jp/feature/
NHK: https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220221/k10013494491000.html