ビタミンDの話(くる病から感染症予防まで)

当院では母乳の赤ちゃんにしつこいぐらい、ビタミンKとビタミンDを勧めています。

 ビタミンK(ケイツーシロップ)については、脳内出血を避けるためです。ビタミンDについては、主にビタミンD依存性くる病を防ぐためです。くる病になると、脊椎や手足の骨が変形し、成長が妨げられることがあります。

 ビタミンD依存性くる病はビタミンDが含まれる食事(魚・卵・きのこ・乳児用ミルク)の不足や、ビタミンDを合成する紫外線不足で起こります。赤ちゃんの場合は、完全母乳育児・極端な食事制限(卵白など)・あと紫外線不足などで起こりえます。

 特に最近の巣篭もりで紫外線が足りなくなっているかもしれません。

 かといって、過剰な紫外線は日焼けのみならず、将来皮膚がんや目の病気を起こすこともあります。時間帯・場所・帽子や衣類・サンスクリーンなどの対策を上手に組み合わせてみましょう。

 日本小児皮膚科学会にわかりやすい説明があります。
こどもの紫外線対策について

 また中耳炎やRSウイルスに罹患したお子さんは、ビタミンDの血中濃度が低かったという報告もあります。
大流行のRSウイルス感染症、重症化傾向が。コロナ禍での〇〇不足も一因か!?【小児科医】

 ただし、現在のところビタミンD摂取で新型コロナが防げるという証拠は無さそうです。
【新型コロナ】「感染症予防にビタミンDが効く」等の情報に注意<国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所>

 母乳育児の赤ちゃんは積極的にビタミンDサプリを使いましょう。また、年齢に限らず日焼け対策をした上で紫外線に適時当たるようにしましょう(ガラス越しでは紫外線は届かないようです)。

 10年前の東日本大震災で、外出を控え放射能が集まりやすいという理由できのこを控えた結果、くる病を発症した赤ちゃんがいました。
東日本大震災と福島第一原発事故を契機にビタミンD欠乏と日光曝露不足により発症したビタミンD欠乏性くる病の1例(PDF)
 社会的不安が大きくなると、子どもへのリスクを避けようとして却って子どもにリスクを負わせてしまうことが度々あります。ゼロリスクという世界はありません。リスクを考えながら、賢く選択してきましょう。