PCRを増やすと感染者が増える?ー相関関係と因果関係

本日道を歩いていたら、こんなポスターがありました(写真は出しません)。

 「PCR検査を増やそう
 「PCR世界から見ても異常な少なさ

 とかいてあり、イタリア・ドイツ・イギリス・アメリカ、それ東京(日本)の棒グラフがありました。1000人あたりの検査数累計(2020年7月31日時点)だそうです。本当の図はもっときれいでインパクトのあるものでした。

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 これを見ると、日本は本当に検査数が足りないからすぐにもアメリカやイギリス並みに増やさないと!!と思うかもしれません。が、ちょっとまっててください。

 これらの国は日本よりも感染者が桁違いに多いのです。

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https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/

 さて、1000万人あたりの感染者数を他の条件を同じにしてグラフを作ってみました。

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 単純に数字だけで他国と自国を比べるロジックからすると、
「感染者増やそう」
「感染者世界から見ても異常な少なさ」
 となってしまいます。

 さて、実際は人口あたりの検査数と患者数の関係はどうなっているのでしょう?下のサイトからデータを取得し図にしてみました(Last updated: September 06, 2020, 12:08 GMT)。グラフは例によって両対数グラフです。

https://www.worldometers.info/coronavirus/

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 小さくて読みにくいかもしれませんが、赤字及び大きな文字で書いてあるところが、最初のグラフで挙げられた国々です。検査数の多い国では、感染者数も多いことがわかります。

 そして、両対数グラフにおいて、検査数と感染者数の関係は直線グラフで表せられそうです(累乗近似)。人口あたりの検査数と人口あたりの感染者数には相関関係(何らかの関連性がある)があるといえます。

 そうすると、ポスターにあったように日本の検査数をアメリカ並みにすれば、アメリカのように流行がおこるのでしょうか?あるいは、検査を無理にでも減らせば、感染者数も減ってくれるのでしょうか?

 いや、そうではありません。なぜなら、「主として検査は流行しているから行う」、つまり感染者が多い国では症状があって医師が検査を必要と考える人が多いからなのです。つまり人口あたり検査数と人口あたり患者数には因果関係(どちらかを原因として別のものが変動する)が無いのです。

 もちろん、ポスターを貼った人も、日本で患者数を増やしたくて検査を多くしようと言ったのでは無いと思います。
 しかし、一部の切り取られたデータだけでは人々を誤った方向に導くこともある、ということだけは知ってほしいです。