陽性率の高さは何を意味する?ー分母にも気をつけよう

最近東京では15時位になると「東京都での新たな感染者はXXX人」とか出るのが普通になってきました。そして、「XX以下はX日ぶり」とか「X日連続してXXX人以上」と出ています。

 数字はたしかにインパクトのあるものですが、それだけではあまり意味がありません。何人くらい検査したのか、分母が大事になってきます。

 たとえば、「XXXワクチンで副作用が100人(分子)出た!!」という場合、接種者(分母)が、200人なのか一億人なのかで、だいぶ状況が変わってきます)。

陽性率(検査陽性率)=(一日あたりの)新規新型コロナ患者数/(一日あたりの)PCR検査数 X 100%

 東京都の陽性者数は9月1日の時点で3.8%です。どうして7日間移動平均というのを使っているかと言うと、現状では週末に検査数が少なくなる「週末効果」があるため、それを均すためです。

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https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/cards/positive-rate/

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 4月の時点では陽性者数は少ないのに陽性率が30%を超えていたことがわかります。それだけ検査数が少なかったのですね。

 さて、それでは世田谷区ではどうでしょう?

https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kusei/001/001/004/d00185364.html

 世田谷区のサイトもそれなりに纏まっているようには見えますが、陽性率はわかりません。そこで、コピペしてグラフを作ってみることにしました。ここでは、陽性率は同じ日の陽性者数と検査者数でで計算してあります。データが辿れる5月12日から9月1日までの数字です。

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 左軸が検査数(人)で右軸が陽性率(%)です。

 そうすると、陽性率は5月頃はかなり低いものの徐々に上がり続け、8月には移動平均線で一時期30%を超えている事がわかります(その後減少気味)。
 こうしてみると、「やはり世田谷区では新型コロナが蔓延している!!」と思えるかもしれませんが、ここは落ち着いて、鈴木貞夫教授のビデオを見ましょう。


 動画から一部引用させていただきます。

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 「原則的には検査不足の指標として有効率は有効である」ということです。別の言い方をすれば、「陽性率は、高ければ高いほど見逃している症例が多く、低ければ低いほど捕捉率が高い」ということになります。

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 検査対象が赤丸の範囲内だと検査数が少ないため陽性率が少なく、見逃しも多くなります。黄色い丸まで検査数を広げると、取りこぼしが少なくなります。

 ただし、これは「検査前確率(事前確率)の高いものから実施する(図でいうと上から下に検査を行う)」という検査の原則に則った場合です。

 その原則が崩れると、陽性率の意味合いが下がってしまいます。

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 事前確率を上げる方法は、以前にも書きました。
新型コロナウイルス:発熱でフルイに分ける理由
(注意:発熱のふるい分けだけで、事前確率が上がるわけではありません)

 WHOよると陽性率が3-12%程度だと感染がコントロールできている状態ということです。この指標も変わってくるかもしれませんが、4月の東京都や8月(特に上旬)の世田谷区は30%以上であり、やはり医学的検査の数が足りないのでは、と思います。

参考資料

 最近テレビなどで様々な「専門家」が出ていますが、やはり検査に関することは、易学ではなく疫学の専門家に聞いたほうがいいでしょう。