四種混合不足-百日咳対策が必要な赤ちゃんにご協力を

現在日本全国で四種混合ワクチン(DPT-IPV)が流通していないようです。

 原因は、ある会社の四種混合ワクチンが国家検定を受かっているにもかかわらず出荷制限が続いているからです。現在四種混合ワクチンは二社で作られています。他社の四種混合ワクチンの需要が増大したため、問題ないもう一方の四種混合ワクチンも事実上供給が難しい状況です。

 先日、該当会社製造のインフルエンザワクチン出荷制限は解かれましたが、他のワクチンは出荷制限が掛かったままなので四種混合ワクチンが全国的に不足しているのです。

 風疹大流行の風疹ワクチン不足とは違いワクチンが不足しているわけでは有りませんし、検定に落ちた不良ワクチンが大量にあるわけでも有りません。ワクチンは大量にあるわけで、この問題は厚生労働省が出荷制限を解けば早晩解決するものだと思います。インフルエンザワクチンの時と同じく、厚生労働省の政治判断が待たれます。

 現在のところ厚生労働省がこの件について動くことはなさそうです。もう一方の四種混合ワクチンの供給が整うことと、12月14日に発売される新しい四種混合ワクチンの供給が十分であれば、一ヶ月半しのげば何とかなります(平成27年10月30日現在)。

 四種混合ワクチンが不足して何が問題になってくるかというと、百日咳の流行です。赤ちゃんの百日咳は重症で、時に生命に関わります。気になる方は下の童画を見てください。この赤ちゃんはいきなり無呼吸発作から始まっています。顔色が真っ青というか真っ黒です。

 一般的に百日咳は百日咳含有ワクチンの接種回数が少なく、月齢が若いほど重症化しやすいです。四種混合ワクチン供給が安定するまでの当院の対策として、

  • 四種混合ワクチンのネット予約を受け付けない。
  • ワクチンデビューのお子さん・当院でワクチン継続中のかた、及び医学的理由で四種混合ワクチン接種が早急に必要な方以外、当面接種しない。
  • 原則1-2回目の四種混合ワクチン接種を優先し、3回目・追加接種(世田谷区では1歳4ヶ月以降)を延期。
  • 供給不足が続けば、まだ一度も四種混合ワクチンを接種していない赤ちゃんを再優先とする。
  • 供給が安定してから、延期していもらっているお子さんの四種混合ワクチン接種を再開。

 を考えています。

 皆様にはご迷惑とおかけしてしまいますが、赤ちゃんを百日咳から守るためです。ご理解とご協力をお願いします。

おまけ1

 出荷制限が掛かった理由は、製造会社のコンプライアンス(法令遵守)問題です。ワクチンとは関係のない製剤ですが、承認書と異なる製造方法により製造していたのです。後述しますが、MMRワクチンと同じ問題であったため厚生労働省は同じ製造会社のワクチンを始め他製品も出荷制限をかけたのかもしれません。

(2015年11月5日追加)
 血液製剤以外でもインフルエンザワクチンに規格外のヘパリンを20年以上も前から入れていたことが明らかになりました(2015年11月6日インフルエンザワクチン自体はヘパリンは入っておらず、単純な誤記・齟齬ということで、訂正します)。しかし、今回不足で問題になっている四種混合ワクチンではありません。

 企業の一部門による不祥事ために企業全体に影響が出てしまいました。生命に関わる仕事をしている以上厚生労働省の判断は正しいという意見もあるかもしれませんが、他方必要な医薬品が使えないために困ってしまうのは患者さんです。事実血友病の治療では深刻な問題になったようです。血友病患者にとって、コントロールの効かない出血は死に直結する恐れもあるのです。

 企業には厳しくてもエンドユーザーにしわ寄せのこない指導が望まれます。

おまけ2

 先ほど「MMRワクチンと同じ問題」と書きました。1989年(平成元年)に国産MMRワクチン(麻疹・おたふく・風疹が3つ一緒になった)が接種できるようになりました。しかし副反応による無菌性髄膜炎の多さのために社会問題化し、国産MMRワクチンは4年ほどで中止になりました。

 調べてみると、ある時を境に特定の会社が作ったMMRワクチンだけ無菌性髄膜炎の頻度が極端に低くなっていることがわかりました。厚生省(当時)に無断でワクチンの作成方法を二度に渡り改変していたのです。製薬業界のモラルも問題になりました。日本の予防接種行政が大きく遅れることになったきっかけです。

 このような経過もあり、ワクチンに関係する企業がワクチン以外の製薬でも無断で改変したことに、厚労省は重く見たのかもしれません。

おまけ3

 問題になった会社のサイトを開くと、この問題に関しては一切言及がありません。代わりに「当所の品質方針を策定しました」というサイトでは品質方針を文章ではなくJPGで表示しています。

当所の品質方針

 4つの箇条書きだけです。この会社がしてきたことを考えれば、あまりにも軽すぎるのではないかと思います。

追記(2015年11月26日)

 夕方に、厚労省が化血研の四種混合ワクチンの出荷自粛要請を解除すると発表してきました。

一般財団法人化学及血清療法研究所が製造販売する沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオ(セービン株)混合ワクチンについて

   一般財団法人化学及血清療法研究所(以下「化血研」という。)が製造販売するワクチン製剤等については、承認書と製造実態の齟齬等についての厚生労働省への報告が適切になされていないことが判明したことから、9月18日付けで出荷の自粛を要請するとともに適切な報告を求め、その後厚生労働省において報告内容の精査を行ってきました。

   今般、化血研が製造販売する「クアトロバック 皮下注シリンジ」(沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオ(セービン株)混合ワクチン)について、厚生科学審議会感染症部会委員に別添資料に基づき、厚生労働省による精査の結果( 品質及び安全性等に重大な影響を及ぼす齟齬はないと判断していること)、及び同種の他社製品の今後の在庫見込みを報告し、化血研の製品の出荷を認めるべきかどうかについて意見を伺いました。その結果、当該製品については、百日せき、ジフテリア、破傷風及びポリオの発生の予防及びまん延の防止を推進する観点から、出荷を認め、供給不足を避けるべきと考えられる、との意見をいただきました。

   厚生労働省においては、当該意見等を踏まえ、本日付で、化血研の「クアトロバック 皮下注シリンジ」出荷自粛の要請を解除することとしましたので、お知らせいたします。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000105418.html

 早晩解除されることが半分言われていたこの「出荷自粛要請」ですが、なかなか解除されなかったために、地方によっては四種混合ワクチンの枯渇が続きました。その地域で百日咳流行があったら、厚労省はどのような対処をするのでしょうか?罪のない子どもたちを公衆衛生上のリスクに晒す「指導」はもう行ってほしくありません。

 当院では流通量を確認次第 規制を解除し、接種控えをしてもらっている方々にお手紙を出す予定です。しばらくお待ちください。

追記2(2015年12月24日)

 四種混合ワクチンの供給がある程度安定してきたので、接種差し控えを本日より解除します(ただし、今後の供給状況によっては変わるかもしれません)。

 ただ、一度にご連絡すると外来が混雑する可能性があるため、百日咳が目立って増えていない現在では、こちらからはまだご連絡しません。診察時・乳児健診などのときにお声掛けします。

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