海外渡航(予定)者のためのワクチン情報

海外赴任・海外留学などで渡航するときなどに、ワクチンが必要になることがあります。

 国内のワクチンは多くの場合医学的に概ね海外産ワクチンと相互互換性がありますが、一部注意すべきワクチンがあります。

A型肝炎ワクチン

 国産のA型肝炎ワクチンはエイムゲイン(化血研)ですが、海外での代表的なワクチンはHAVRIX(グラクソ・スミスクライン)です。ワクチンスケジュールは全く違います。

  • エイムゲン 0,1m,6m
  • HAVRIX 0,6-12m

 いずれも不活化ワクチンですが、今のところ相互互換性は確認されていません。つまりエイムゲンで始めた場合、エイムゲンで完了する必要があります。

三種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風・百日咳)

 破傷風入りの混合ワクチンは、日本はいわゆる三種混合ワクチン(DTP:Dジフテリア・T破傷風・P百日咳)、二種混合ワクチン(DT:Dジフテリア・T破傷風)、それに四種混合ワクチン(DTP-IPV:DTP+不活化ポリオワクチン)があります。百日咳に対応しているワクチンは、小児用しかありません。

海外では、Tdapという百日咳に対応したワクチンがあります。ちなみに日本のDTPはDTaPと海外で表現します。お察しの通りジフテリアと百日咳の抗原量を減らしています。これで局所反応を軽減することができます。

 北米に留学する際に、Tdap接種を求められることがあります。これは、日本のDTワクチンや同じく日本のDTPワクチンで代用することは出来ません。

日本脳炎ワクチン

 北米では必要ないと思いますが、東南アジアに行く際には日本脳炎ワクチンが必要になる場合があります。日本では北京株を使用した不活化ワクチンです。中国ではSA14-14-2株を使用した生ワクチン、アメリカでは同じくSA14-14-2株を使用した不活化ワクチンです。

 相互互換性は認められていません。お子さんも海外赴任に帯同する場合、日本に帰る予定であれば日本のワクチン(ジェービックV、エンセバック)を選んだほうがいいでしょう。

狂犬病ワクチン

 日本にも狂犬病ワクチンはあります(化血研)が、供給量は非常に少ないです。海外では何社か狂犬病ワクチンを作っています。ヨーロッパ・北米主要国メーカーで作られたものであれば、相互互換性はあります(Verorab/Rabipurなど)。Rabipurや国産狂犬病ワクチンは作り方が同じニワトリ胚細胞のワクチン (PCEC)ですが、接種スケジュールが異なります。

  • 国産:0,1m,6-12m (最短6ヶ月)
  • 海外:0,7d,21-28d (最短3週間)

 3回接種を完了しないと、免疫があるとはみなされません。日本のスケジュールはずいぶんとのんびりしていますが、日本以外にこのようなスケジュールで行っているところはありません。

 日本のスケジュールで2回目まで国内で接種し、3回めは海外で…という場合、渡航先で日本の狂犬病ワクチンが手にはいらないので接種完了できないということもなりかねません。

検疫所の情報は有用だけど…

 突然渡航することになった場合、海外のワクチン接種情報は厚労省検疫所のFORTHで調べることが多いと思います。情報が網羅的で有用ですが、問題点がいくつかあります。

  1. 推奨ワクチンがその国・地域に特化したワクチンのみで、世界的に普遍な感染症(おたふく、水痘、麻疹、風疹、百日咳)への明確な記載がない。
  2. 「予防接種実施機関検索」で狂犬病・A型肝炎ワクチンなどに、国産・海外産の区別がない

 ワクチン接種する際には接種外来に、ワクチンの種類を確認した方がいいでしょう。渡航前は忙しいとは思いますが、余裕を持って計画的にお願いします。

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