2021.02.14
カテゴリ:新型コロナウイルス
COVID-19ワクチンに関する専門的な記事を書くときのヒント
いよいよ日本でも新型コロナワクチンが接種できそうです。
ここでは新型コロナワクチンの是非については書きません。WHOがジャーナリスト向けに「Tips for professional reporting on COVID-19 vaccines COVID-19ワクチンに関する専門的な記事を書くときのヒント」というものを出していますのでこれを解説を交えながらご紹介していきます。
ニュースを見るときこのヒントから外れた報道ではないか、注意してみてください。
例によって下手訳はご容赦ください。
- トップラインだけを報道しない Don’t just report the topline
日本の記事でも内容がまともでも、見出しが煽り文句で派手なものが時々あります。中にはこのタイトルは本当にこの記事を書いた人が選んだのか、と思えるものもあります。
- データを無条件に信用しない Don’t trust data automatically
- 誠実で信頼できる情報源を利用せよ Use trusted and reliable sources
- 情報源を明記せよ State the source
残念ながら、不確かな情報で不安を煽る記事や本があります。疑念に感じたら、ソースを当たりましょう。
事例
「子宮頸がん予防ワクチンが無意味」?
近藤誠氏は日本での百日咳を何故語らない?こんなに悲しいグラフがあるんだ。-DPTについて考える-
- 用語を定義せよ Define the terms
- わかりやすい言葉を使用せよ Use clear language
別々の人が同じ言葉を違う意味で話していたら、混乱が生じてしまいます。「有効」とはどういった意味か、きちんと理解する必要があります(有効率95%というのは100人にワクチンをして95人感染しなかったという意味ではありません)。これについては私も本の中で書きました。
- 段階を説明せよ Explain the stage
「XXを使ってコロナウイルスが消えた!!」というニュースもありますが、この殆どが試験管レベル(in vitro)のものです。また臨床でも有効なのか(in vivo)、論文であれば査読を受けたものなのか、確認する必要があります。
- 数字を報告せよ Report the numbers
ワクチンや研究を報告する際には、規模・検査数・検査機関を明記することが大事です。
- 副作用を開示せよ Disclose the side effects
副作用の100%ないワクチンというものはありません。副作用についてはきちんと開示をすることが必要です。ただし、接種しなかった群と比べてみて、本当に副作用か確認する必要があります。
具体的には「ワクチン接種後に高齢者がXXX人死亡」というのがあります。もともと高齢者を中心に打っていたので、残念ながら自然死してしまう方もいるのです。ワクチンをした群・しなかった群でわけて、本当に死亡者に差が出ているのか、比べる必要があります。
また発熱・痛みなどの軽微なものと、アナフィラキシー・脳炎など重篤なものとは区別すべきです。「接種者の半分以上で副作用がでた!」という場合、ほとんどが軽微なものなのです。
- 適切なイメージを使用せよ Use appropriate imagery
記事の中にあるイラスト・写真の選択は重要です。注射を打たれて泣いている赤ちゃんや針の拡大図など、不安を煽るものは避けたほうがいいです。
- 人口統計も忘れずに Don’t forget demographics
難しいことを言っているようですが、簡単に言えば「分母も考えましょう」ということです。
「ワクチン接種後に米国内で1170件死亡」というと随分大きい数のように思えます。しかし、アメリカでは4,100万回分以上接種されています。計算すると、死亡率は 0.003%弱です。同じことを言っているようでも、人口統計というものさしを使えば、イメージはだいぶ変わってきます(そもそも本当にワクチンのせいなのか確認する必要もあります)。
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/safety/adverse-events.html
- ワクチンの利点を全員に伝えよ Remind everyone of the benefits of vaccines
パンデミック中、誤った情報が氾濫しているため、すべてのワクチンの重要性を読者に伝えることを忘れてはいけません。
歴史上の流行を終結させうるワクチンの有効性についての事実と統計を報告することで、ワクチンの迷い(Vaccine hesitancy)に対処してください。