ゾフルーザの当院処方について2026年版

インフルエンザの新しい治療薬(ゾフルーザ)が登場した当初、私は次のような記事を書きました。

ゾフルーザの当院処方について
https://www.karugamo-cl.jp/index.php?QBlog-20190124-1

 あれから7年。研究や診療データが蓄積し、日本小児科学会の治療指針も更新されました。そこで今回、現時点での考え方を改めてまとめます。

安全性と有効性について

 ゾフルーザについての知見が積み重なり、一定の安全性と有効性が示されています。
 12歳以上では、タミフル(オセルタミビル)より解熱が早い可能性を示す報告もあります。
 ただし日本では、解熱が早くなっても出席停止(登園・登校の目安)などの隔離期間が短くなるわけではありません。

参考:
Real-world effectiveness and safety of Baloxavir Marboxil or Oseltamivir in outpatients with uncomplicated influenza A: an ambispective, observational, multi-center study
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11300241/

「耐性化(薬が効きにくいウイルス)」の問題

 一方で、ゾフルーザは特にA型インフルエンザで、治療中に薬が効きにくい(耐性)ウイルスが出てくることがあると知られています。
 そして、その耐性ウイルスが同居家族へうつった可能性があると報告された例もあります。
 とくに小児では、この問題が起こりやすい点が重要です。

(※ここで言う「耐性」は、体質の問題ではなく、ウイルス側の変化の話です。)

ゾフルーザ顆粒が登場

 これまでゾフルーザは錠剤が中心で、10kg未満のお子さんには適応がありませんでした。
 しかし2025年に、ゾフルーザ顆粒(2%分包)が発売となりました。

  • 10kg未満でも使用可能
  • 目安:顆粒50mg/kg(バロキサビル マルボキシルとして1mg/kg換算)

 「飲みやすくなる」「体重に合わせて調整しやすい」という意味では前進ですが、後述のとおり、年齢が低いほど“積極的に使う薬”ではない、という整理になります。

日本小児科学会の「2025/26シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」

 日本小児科学会から「2025/26シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」が出ています。
https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=655

 この指針では、ゾフルーザ顆粒の登場で「小児インフルエンザ治療の年齢制限が実質的に解消される」としつつも、5歳未満での積極的使用は推奨しない方針が示されています。
 一方、年長児(特にB型)では、従来より「使う場面が増える」方向に見える点も読み取れます。

 私の考えとしては、ゾフルーザは薬価が高い薬でもあるため、医療費の観点からも「何となく」使うことは避けるべきだと思っています。
(もちろん、症状や家庭状況などから“この子には必要”と判断する場面はあります。)

参考:抗インフルエンザ薬の費用(1治療コースあたりの目安)

※薬価や自己負担額は、改定や後発品の供給状況、処方内容によって変わります。ここでは「薬そのものの価格の目安」として示します。

薬剤名成人(60kg)小児(20kg)乳児(10kg)
タミフル(先発)1,890円1,600円800円
オセルタミビル(後発)1,100円1,060円530円
リレンザ2,270円2,270円該当なし
イナビル4,200円2,100円該当なし
ゾフルーザ(錠/顆粒)4,880円2,440円1,666円

まとめ(当院の基本方針)

  • ゾフルーザは「効く薬」ですが、特に小児では耐性の問題を踏まえて使いどころを選ぶ
  • 5歳未満では「便利になった」一方で、積極使用は推奨されないという整理
  • 価格も含め、必要性を見極めて適正使用する