お願い2:おたふくかぜワクチン接種後の副反応調査

【御礼】

この度無事調査結果が発表されました。

コロナ禍で大変だったときですが、100名以上の方に協力していただきました。皆様、ありがとうございます。

「おたふくかぜワクチン接種後の副反応に関する全国調査報告」の掲載について
https://www.jpeds.or.jp/modules/news/index.php?content_id=1278


当院だとおたふくワクチン(ムンプスワクチン)は、1歳になったらMRワクチンと水痘ワクチンと一緒に同時接種しています。これが1回目のワクチンです。

2回目は3-5歳で接種しています。おたふくが流行っているときは3歳位で接種していますが、現在は5歳位で接種しています。MR二期と同時接種です。

多くの国ではMMRワクチンと言って、麻疹(measles)、流行性耳下腺炎(おたふく風邪、mumps)、風疹(rubella)3つはいったワクチンを使っています(一部の国ではMMRVといって、水痘 varicella が入ります)。

おたふくの合併症

おたふくは頬が腫れる耳下腺炎だけだと思っている人がいるかも知れませんが、合併症は多いです。

合併症としての無菌性髄膜炎は軽症と考えられてはいるものの、症状の明らかな例の約10%に出現すると推定されており 4)、Bang らはムンプス患者の62%に髄液細胞数増多がみられ、そのうち28%に中枢神経症状を伴っていたと報告している 5)。思春期以降では、男性で約20~30%に睾丸炎 4)、女性では約7%に卵巣炎を合併するとされている。また、20,000 例に1例程度に難聴を合併すると言われており、頻度は少ないが、永続的な障害となるので重要な合併症のひとつである。その他、稀ではあるが膵炎も重篤な合併症の一つである。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/529-mumps.html

おたふくによる聴力障害はまず治らないです。
最近はムンプス難聴は1,000例に1例と言われています。

MMRワクチンの影

少し長いですが、拙書を引用させてください。

さらに1993年(平成5年)に日本で接種中止となった「MMRワクチン」の副反応が、その後の予防接種行政に影を落とした原因の一つだと私は思っています。「MMRワクチン」とは、おたふく(Mumps)、麻疹(Measles)、風疹(Rubella)の混合ワクチンで、世界でも広く接種されているワクチンのひとつです。
この接種中止になったMMRワクチンは日本独自のもので、副反応が多く報告されました。最終的な報告によると、おたふくワクチンの株が原因で、少なくとも800人に1人が脳炎を起こし、中には命を落とす人もいたとのことです。おたふくワクチンの株の副反応が多くなったのは、一部の製造会社が免疫の付きをよくするために、厚生労働省の承認を得た培養法とは違う方法で製造したからだといわれています。海外からのデータによって、日本製MMRワクチンに脳炎などの副反応が多いことがわかっていたにもかかわらず、厚生省(当時)は4年間も接種を中止しなかったのです。製薬会社の対応と厚生省の対応の遅れ、それから一連のMMRワクチンについての報道は、予防接種への不審感を高めるものでした。
p21-22

そういったこともあり、日本ではおたふくワクチンはずっと自費のままです。

おたふくワクチンの安全性

MMRワクチンによる脳炎・無菌性髄膜炎の多さは、占部株が原因でした。現在は、現在は、鳥居株(武田薬品工業)と星野株(北里第一三共ワクチン)の2株が使用されています。

ムンプス自然感染では1~2%が無菌性髄膜炎で入院し、難聴も 1,000例に1例認められています。一方、ワクチン接種後の副反応として耳下腺腫脹は2~3%、無菌性髄膜炎は2,000~3,000接種に1例の頻度であることからワクチン接種のメリットは明らかです。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2254-related-articles/related-articles-402/3785-dj4022.html

ただし、おたふくの定期接種化を行うたためには、10万人から20万人の前向き調査が必要とされています。

調査ご協力のお願い

そのため、日本小児科学会 および 日本医療研究開発機構(AMED)の2つの研究班では、共同でおたふくかぜワクチンの定期接種化を検討するための参考資料とすることを目的として、国産おたふくかぜ単味ワクチン接種後の副反応が疑われる症状に関して多数例についての大規模調査研究を行っています。

遅ればせながら、当院も2020年1月から遡ってアンケートを募っていこうかと思います。
詳細はこちらもご覧ください。
https://mu-vsd-faq.children.jp/?HomePage


研究課題名(日本小児科学会 倫理委員会受付番号)おたふくかぜワクチン接種後の副反応に関する全国調査(No.:35-修正-01)
当院の研究責任者宮原篤
他の研究機関および各施設の研究責任者・日本小児科学会:多屋 馨子
・日本医療研究開発機構(AMED)新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業ワクチンの実地使用下における基礎的
・臨床的研究及びワクチンの評価・開発に資する研究:菅 秀
・日本医療研究開発機構(AMED)ワクチンで予防可能な疾病のサーベイランスとワクチン効果の評価に関する研究:鈴木 基
本研究の目的国産2社のおたふくかぜ単味ワクチン接種後の副反応に関して多数例についての調査を行い、おたふくかぜワクチンの定期接種化を検討するための資料とすること。
調査データ該当期間2020年1月1日~2023年3月31日
研究の方法
(使用する試料等)
1)1歳以上小学校就学前におたふくかぜワクチンを接種した方の年月齢、性別、接種日、ワクチンの種類、接種回数、接種4週間後および8週間後の健康状態、副反応が疑われる症状発現時はその状況、同時接種ワクチンの有無とその種類を、匿名化した後に専用のデータベースへ入力します。
2)副反応が疑われる症状が現れた場合には、あらためてご説明し、文書による同意を得た上で、症状の詳細を調査させていただきます。
3)収集データは日本小児科学会およびAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構;https://www.amed.go.jp/)研究班で解析されます。
4)解析結果は日本小児科学会やAMED研究班に報告され、学術集会や学術誌および研究班報告書、厚生労働省の会議等で発表されます。
試料/情報の他の研究機関ヘの提供及び提供方法各施設より取得する情報には患者さま個人が特定される情報は記載せず、日本小児科学会事務局へ集約されます。集約されたデータは、AMED研究班の研究者にも共有されます。
個人情報の取り扱い利用する情報から氏名や住所等の患者さま個人を直接特定できる個人情報は削除します。また、患者さまを特定できる個人情報は利用しません。
本研究の資金源
(利益相反)
本研究はAMED研究班(研究開発課題名「ワクチンの実地使用下における基礎的・臨床的研究及びワクチンの評価・開発に資する研究」および「ワクチンで予防可能な疾病のサーベイランスとワクチン効果の評価に関する研究」)の研究費を用いて実施されます。本研究に関連し開示すべき利益相反関係にある企業等はありません。
お問い合わせ先電話:03-5426-2220、 研究責任者:宮原篤