風疹対策-2020年には間に合うの?

4年前、私はこんなブログをアップしました。

風疹対策ー2020年では遅すぎる

 2014年当時は、オリンピックが開かれる6年までには風疹はなんとか収まるだろう、と厚労省は思っていたようです。

 ところがそうは行かず、2018年も風疹は流行しています。主に風疹ワクチンを接種していなかった40-50代男性におおいです。パートナーや職場の女性が妊娠してれば、胎児が先天性風疹症候群にかかる可能性があります。

 どうして厚労省がオリンピックまでの対策を立てたかというと、オリンピックで多くの人は集まる(マスギャザリング)と、様々な感染症が伝播しやすいからです。髄膜炎菌など海外から入ってくる感染症もありますが、日本土着の風疹が日本で海外の人に感染し、海外で先天風疹症候群が増えるかもしれません。

 2013年に日本で風疹が流行したとき、アメリカのCDCが日本への渡航で注意喚起を出しました。それが、Rubella (German Measles) in Japanでした。注意レベルとしては、"Alert - Level 2, Practice Enhanced Precautions"でした(ちなみに、2014年日本で騒がれたデング熱は、"Watch - Level 1, Practice Usual Precautions")。

 2013年の注意喚起では、日本旅行を諦めた女性もいるとききました。2020年のオリンピックの年に同じ注意喚起が出るかもしれませんね。

 私は以前のブログにこのように書きました。

 風疹対策は何も荒唐無稽なものではありません。アメリカでも1962–1965年に風疹が大流行しましたが、風疹ワクチン接種の徹底により収束しました。アメリカでは2009年以降風疹の発生はありません。ワクチン接種の徹底でherd immunity(集団免疫、群れの免疫)が実現すれば、風疹ワクチン接種ができない妊婦さんにも恩恵です。

 しかし、厚労省は積極的なワクチン接種を勧めてはいませんでした。

 呼びかけるだけは風疹流行は収まりません。

 厚労省はオリンピックの前年(2019年)に、30-50才男性の風疹抗体検査を無料化するという方針を立てました。

風疹の抗体検査、無料に=30~50代男性対象-厚労省
 厚生労働省は2019年度から、風疹の免疫の有無を調べる抗体検査について、30~50代の男性が無料で受けられるよう公費で補助する方針を決めた。同年度予算の概算要求に経費を盛り込んだ。

 厚労省の言い分としては、30-50代男性全員に接種するだけのワクチンはないから、とりあえず検査だけしてね、ということなのでしょう。

 しかし検査している間に風疹にかからない保証はどこにもありません。また、予算化できるのが来年度ということですが、厚労省は今年は検査しなくてもいい、と考えているのでしょうか?

 オリンピックまでに風疹対策をすればよく、それまでの風疹流行(ひいては先天性風疹症候群の発生)はやむを得ない、と思っているひとはいないと思います。

(このブログつづく?)

CDCがレベル2のアラート(勧告)(2018年10月24日)

 追加します。

 このブログで「2013年に日本で風疹が流行したとき、アメリカのCDCが日本への渡航で注意喚起を出しました。」と書きましたが、2018年10月22日、CDCは再び予防接種を受けていないなど感染のおそれがある妊娠中の女性に対しては、感染の拡大が治まるまで日本への渡航を自粛するよう勧告しました。米が妊婦の日本への渡航自粛勧告 風疹感染拡大で | NHKニュース

 2013年と同じレベルのAlert Level 2, Practice Enhanced Precautionsです。

 具体的な分類を、CDCのサイト(Travel Health Notices)から引用してみます。

Warning Level 3, Avoid Nonessential Travel
警告 レベル3、不必要な旅行を避ける

Alert Level 2, Practice Enhanced Precautions
勧告 レベル2、さらなる注意を

Watch Level 1, Practice Usual Precautions
注意 レベル1、通常の注意を

 今回のレベル2は、3段階のうち上から2番めです。

 具体的な内容で言うと、レベル3は現時点では、インドネシアでの地震・津波、ベネズエラでの医療資源の破綻があります。

Level3

 レベル2はコンゴ民主共和国でのエボラ出血熱、ナイジェリアでのサル痘、それに南米各国でのジカウイルス感染症などです。

Level2

 アメリカのCDCは自国民を守ることを前提に、日本の風疹流行を、コンゴ民主共和国のエボラ出血熱やナイジェリアのサル痘、それに南米のジカウイルス流行と同じレベルと考えているのです。

 このまま有効な風疹への対策を打つことができずに2020年にも同じ勧告がでたら、海外からの旅行者(特に女性)の少ない東京オリンピック・パラリンピックになるかもしれませんね。