抗生剤の使い方(4)ーー当院の抗生剤処方率はどのくらい?

厚労省が抗生剤の薬剤耐性(AMR)について、次のようなアクションプランを設けています。

アクションプランの成果指標

  1. 2020 年の肺炎球菌のペニシリン耐性率を 15%以下に低下させる。
  2. 2020 年の黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率を 20%以下に低下させる。
  3. 2020 年の大腸菌のフルオロキノロン耐性率を 25%以下に低下させる。
  4. 2020 年の緑膿菌のカルバペネム(イミペネム)耐性率を 10%以下に低下させる。
  5. 2020 年の大腸菌及び肺炎桿菌のカルバペネム耐性率0.2%以下を維持する。
  6. 2020 年の人口千人あたりの一日抗菌薬使用量を 2013 年の水準の 3 分の 2 に減少させる。
  7. 2020 年の経口セファロスポリン系薬、フルオロキノロン系薬、マクロライド系薬の人口千人あたりの一日使用量を 2013 年の水準から 50%削減する。
  8. 2020 年の人口千人あたりの一日静注抗菌薬使用量を 2013 年の水準から 20%削減する。
    (太字は筆者)

薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン (2016-2020)(PDF)

 日本では第三世代の経口セファロスポリン、フルオロキノロン(ニューキノロン・レスピラトリーキノロンと呼ばれるもの)・マクロライド系(14環、15環など)と呼ばれるもの、更には経口カルバペネム系抗生物質が、世界的に見ても非常に多く処方されており、AMRの一因となっています。

 個々の抗生剤の名称は以下のとおりです。最近は後発品(ゾロ)も多く出ているため、後発品での名称である一般名も載せておきます。小児科っぽく、主に小児科で使われているもののみ載せておきます。

第三世代経口セフェム
フロモックス(セフカペン ピボキシル)、メイアクト(セフジトレンピボキシル)、トミロン(セフテラムピボキシル)、バナン(セフポドキシムプロキセチル)、セフゾン(セフジニル)など
フルオロキノロン
オゼックス(トスフロキサシン)
マクロライド系
クラリスクラリシッド(クラリスロマイシン)、ジスロマック(アジスロマイシン)
経口カルバペネム
オラペネム(テビペネム ピボキシル)

 外来小児科医がAMR対策に貢献できることといえば、上記の抗生剤の過剰な処方を控えることでしょう。

 当院でどの程度抗生剤を処方したか調べたことがあります。2016年8月-2017年8月末にかけて、未就学児に出した処方箋の数と、処方箋の中に含まれる各種抗生剤の割合を含めたものです。処方箋は喘息やアレルギー性鼻炎など、感染症以外のものも含まれていることはご了承ください。

2017年の抗生剤処方率

 一応抗生剤名はモザイクをかけましたが、一位はペニシリン系、二位は第一世代セフェム、第三位が第三セフェムです。0%は処方していない薬剤名です。細かい話ですが、バクタは処方しており、経口カルバペネムは処方していません(つまり0%)。

 当院での第三セフェム処方率は0.7%です。処方された抗生剤全体で見れば4%弱になります。簡単な比較はできないと思いますが、上記のアクションプランからだと、

一方で、日本の経口抗菌薬使用の特徴として、経口広域抗菌薬の使用割合が極めて高いことが挙げられる。2013 年における経口抗菌薬の使用割合は、マクロライド系薬が 33%、セファロスポリン系薬が 27%(うち 80%は第 3 世代)、フルオロキノロン系薬が 19%と全体の約 80%を占める。これらの抗菌薬の使用を半減し、適正使用の推進により静注抗菌薬の使用量を 20%削減することで、全抗菌薬の使用量を 3 分の 2 に減少させることを目指す。

 ということだそうです。

 2020年といえばあと2年チョットです。国はどのようにしてアクションプランを達成するのか、気になります。

オマケ

 このグラフは当院で使用しているダイナミクスという電子カルテのデータから作りました。慣れればデータを抽出するのは簡単です。