二分脊椎は遺伝する?ー妊娠前から葉酸補給を

数日前保護者より「いとこが潜在性二分脊椎だったけど、二分脊椎は遺伝すると聞きました。私の子どもは大丈夫でしょうか?」と問い合わせがありました。診察上は二分脊椎の所見はありませんでした。遺伝についても少し説明しました。

 この際なので、少し二分脊椎と遺伝の話について書いてみます。

二分脊椎について

 背骨には脊髄という神経の束が通っています。脊髄は胎児のときには神経管という細長い堤防のような形をしていますが、妊娠6週頃神経管左右がくっついて閉鎖します。この閉鎖がうまくいかない(神経管閉鎖障害)と、二分脊椎になる可能性があります。程度は色々あり、外から見て明らかに神経が見えるタイプ(顕在性)から皮膚が覆ってあるタイプ(潜在性)まであります。潜在性は乳児健診などで分かることもあります。

 神経管閉鎖障害を「神様の手が届かないために、背中の上下のファスナーが腰の部分だけ最後に閉じずに生まれてきた」(田中太平:出生早期の新生児正しい見方)と表現する人もいます。ただ、脊椎だけではなく、大脳も含めた脊髄以外の中枢神経系で病変が見つかることもあります。

二分脊椎は遺伝する?

 さて、二分脊椎は遺伝するか という話ですが、半分はあっていて、半分は間違っています。二分脊椎の遺伝様式は多因子遺伝と言って、複数の遺伝子と環境要因の相互作用によって発生します。「メンデルの法則」に則るわけではありません。多因子遺伝はほかにも血圧や身長の高低・口蓋裂などがあり、何かしらの「病気へのなりやすさ」は誰もが持っているものだと思って下さい。

二分脊椎の環境要因は?

 二分脊椎の環境要因は、妊娠中の葉酸不足です。妊娠がわかってから葉酸を多く摂ればいいのではなく、妊娠一ヶ月「前」から妊娠3ヶ月ほどまで1日400マイクログラムの葉酸を摂れば二分脊椎のリスクは低くなります。

多くの人は妊娠「前」の葉酸必要性を知らされていない

 しかし、妊娠一ヶ月「前」から葉酸を多く必要ということは、多くの人たちは知りません。母子手帳には葉酸の記述はありますが、多くの人が母子手帳を手にするのは、妊娠が分かってからのことです。

 最近、日本先天異常学会からも声明が出されましたが、妊娠中葉酸を多く摂らず二分脊椎症などの神経管閉鎖障害を来した事例が日本では減っていません(日本先天異常学会のメッセージ:葉酸サプリメントの摂取により神経管閉鎖障害の発症リスクを減らしましょう http://jts.umin.jp/new/JTS_message2016.pdf )。

葉酸をたくさん摂る方法

 葉酸の必要性を多くの妊婦さんが知らなかったのは、医療関係者の怠慢であるかもしれません。妊娠予定の方々にも先天性感染症(TORCH)に加えて葉酸の説明が必要です。

 アメリカでは、穀物類へ葉酸の添加が義務付けられています。アメリカ産の成分表示に "Folate"とか"Folic Acid"と表示されているはずです。

 お金を出して医学上必要なサプリメントを買う自由は尊重されるべきですが、収入にかかわらず多くの人たちが不利益にならない方法を考えるべきです。

添加すべきは葉酸だけではない

 なお、外国では葉酸のみならず鉄分も添加した小麦粉があります(MMWR抄訳:葉酸と鉄による小麦粉強化の傾向-全世界、2004年と2007年 https://www.imic.or.jp/library/mmwr/14717/ )。日本ではあまりクローズアップされていませんが、鉄欠乏性貧血や鉄欠乏症で苦しんでいる子どもや成人女性が日本では多そうです。

 鉄欠乏症のお話は、また後日。

妊婦にレバーは気をつけて

 追加です。

 葉酸と鉄分が多く入っているレバーは離乳食にも推奨されていますが、ビタミンAが多いです。妊娠初期にビタミンAを多く摂りすぎると胎児に悪い影響が出ると言われています。ただ、極端にビタミンAが少なくてもやはり悪い影響が出るようです。詳しくは産婦人科医などに相談して下さい。