【祝】麻しん排除認定通知書授与式。そして、その後に続くもの

最近殺伐としたニュースしか流れないなか、あまり話題にならないものの嬉しいニュースが有りました。

はしか排除、通知書を授与 厚労相「五輪向け維持を」
 日本がはしか(麻疹)の「排除状態」だと認定する世界保健機関(WHO)の通知書の授与式が31日、厚生労働省で開かれ、塩崎恭久厚労相が「2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて排除状態を維持するため、高い予防接種率を確保し、サーベイランス(監視)や発生時の迅速な対応に取り組む」と決意を述べた。通知書はWHOの申英秀西太平洋地域事務局長が厚労相に手渡した。
http://www.sankei.com/life/news/150831/lif1508310042-n1.html

 日本では予防接種訴訟のトラウマからか、予防接種に関してはかなり及び腰になっていました。そのため、日本では麻疹が流行し、そのうち何人かは麻疹脳炎・麻疹肺炎、それからSSPE(亜急性硬化性全脳炎:後述)で残念ながら命を落としたお子さんもいました。日本は「麻疹の輸出国」と言われていたこともあります。10年以上経験を持つ小児科医であれば、麻疹がらみで悲しい経験をしたことはあるはずです(ちなみに私は0歳の時にアンチワクチンな親を持つ子どもから麻疹に感染し、生死をさまよったと聞いています)。

 ようやく麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)が二回接種となり紆余曲折ありましたが、3年間土着の麻疹が無いことが認められたのです。

 この話をすると、「SSPE青空の会」のお話を思い出します。2007年に厚生労働省で行われた検討会で、SSPE青空の会の畑秀二さんの発言です。

SSPE青空の会 畑氏。亜急性硬化性全脳炎の子供を持つ親の会です。麻疹感染後、長い潜伏期間を経て発病する特定疾患ですが、畑氏のご子息は13歳で発病しています。SSPEの麻疹罹患年齢の80%は2歳未満だそうです。 SSPEは麻疹の流行がなくなれば確実に撲滅できる。 2012年に麻疹排除を達成し、2015年にSSPE青空の会が解散することが願いですとのこと。
第14回予防接種に関する検討会 2007年7月9日(月)

 同じく早急な排除が期待される風疹(および先天性風疹症候群)の関係者(風疹をなくそうの会『hand in hand 』)も喜びもひとしおです。
【麻しん排除認定通知書授与式】傍聴して!

 しかし、麻疹が土着の麻疹が排除されたからと言って、日本で麻疹が全くないわけではありません。毎年海外からの持ち込みによる麻疹が報告されています。予防接種率が下がれば、再び麻疹が流行します。事実接種率の下がったアメリカでは、ディズニーランドを介して麻疹が流行しました。ドイツでも麻疹が流行し、守れるはずだった1歳半のお子さんが麻疹のため死亡しています。

 アメリカやヨーロッパで麻疹が流行したのは、「ワクチンは怖い」という風評で保護者が接種を控えたためです。「予防接種をするリスク」を膨らまそうと思えば、いくらでも膨らませることはできます。しかし、忘れてはいけないのは「予防接種をしないリスク」です。

 こちらの記事もご覧ください。

予防接種の恩恵は(高畑紀一)

 よろしくお願いします。

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