13価小児肺炎球菌ワクチン(プレベナー13)について

以前からあるけれど「新しい」肺炎球菌ワクチン

 細菌性髄膜炎ワクチンの一つ、小児肺炎球菌ワクチンが世界で発売されたのは2000年です。日本で認可されたのは2009年10月16日ですが、その頃すでに海外では新しい小児肺炎球菌ワクチンが認可されていました。

 最初の小児肺炎球菌ワクチンは7価の小児肺炎球菌ワクチン(プレベナー7)で、これから日本で出る小児肺炎球菌ワクチンは13価です(プレベナー13)。専門家の中では、PCV7とかPCV13と表現する事があります。このブログでも、PCV7、PCV13と表記します。

※主に高齢者で使われる肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)はPPSV23と呼ばれ、免疫学的にも全く違うワクチンです。

※※日本にはありませんが、小児肺炎球菌ワクチンでPCV10というのがあります。商品名はSynflorixといいます。

新しいワクチンに切り替わる理由

 これまでのPCV7では髄膜炎の原因となる主要な肺炎球菌をカバーしており、事実肺炎球菌による細菌性髄膜炎は激減しました。その一方で今まで目立ってなかった他の型の肺炎球菌による髄膜炎の比率が高くなってきました。野球のチームで選手と補欠がいて、選手が怪我で選手が出れなくなったため、補欠の存在が目立つようになったのと同じかもしれません(しかも、ここの選手と補欠はどちらも手強いです)。

 今まで対応できなかった型に対向するために、13価の小児肺炎球菌ワクチンが開発されたのです。

「接種控え」は得策ではない

 気になるのはPCV7からPCV13への切替方法です。PCV13は2013年11月から接種が始まる予定です。どうせなら、新しいワクチンを接種したいから11月まで接種をまとうとする人もいるかも居ません。また、これまでヒブワクチンや四種混合ワクチンなどで私達は「品不足」を何度となく体験してきました。11月までPCV13接種を待った挙句、結局接種できずに従前のPCV7を接種せざるを得ないという事態は避けたいです。

追加接種をどうするか

 もう一つ問題なのが、PCV7の追加接種を完了した場合です。海外ではPCV7による追加接種が完了していた場合、2ヶ月以上の間隔を開けてPCV13を接種することになっています。本来であればこの追加接種も定期接種で行うべきなのですが、今回は自費となりました。

どうすればいいのか

初回免疫(0才)について

 できるだけ早めに免疫をつけることは必要です。PCV13とは関係なく、スケジュール通りに粛々とワクチンを進めてください。

追加接種について

 厚生労働省の小児肺炎球菌ワクチンの切替えに関するQ&A

Q10.新しいワクチン(13価小児肺炎球菌ワクチン)は11月1日に定期接種に導入されるとのことですが、それまで接種を待っていてもよいですか?
 小児の肺炎球菌感染症は、特に乳幼児期に重症化することが多く、問題とされる病気です。ワクチンの接種を遅らせたり、途中で中断したりしてしまうと、十分な予防効果を発揮できずに肺炎球菌感染症を発症してしまう可能性があります。そのため、原則として11月1日の導入を待つことはお勧めできません。

※なお、下記の2つの条件を全て満たしている場合については、予防効果を維持出来ることが示されているため、「プレベナー13(沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)」の導入を待つことも選択肢として考えられます。
(1) 平成24年5月1日以降に出生した者
(2) 生後2ヵ月から7ヵ月に至るまでの間に接種を開始し、「プレベナー(沈降7価肺炎球菌結合型ワクチン)」による3回の初回接種を終了している者

と書いてあります(この通知が書類で流れたのは8月13日からです)。

 簡単に言うと、平成24年(2012年)5月1日以降生まれで3回の初回接種が終わっている人です。2013年9月の時点で1才4ヶ月以降になります。

 当院では1才1ヶ月(2013年9月現在で2011年8月生まれ)でヒブワクチン・肺炎球菌ワクチンの追加接種が完了しますので、厚生労働省のいうPCV13の導入を待つことも選択肢として考えられる年齢です。

 しかし、先程も書いたとおりPCV13が品不足にならないという可能性は否定できません(もし、品不足が絶対に起こらないという確証があれば撤回します)。当面の間は、追加接種をする際や予定を立てる際に、ご相談した上でスケジュールを決めようかと思います。もちろん、PCV7を追加接種した方では、2ヶ月後のPCV13接種をおすすめします。

PCV13と他のワクチンの同時接種について

 元々小児肺炎球菌ワクチンは発熱を起こしやすいワクチンです。また、これまでのワクチンとの同時接種で発熱などの有害事象が相乗的に増加したということもありません。

 ただ、特に12-23ヶ月のお子さんがPCV13とインフルエンザワクチンを同日に接種した場合、熱性痙攣のリスクが高まるという報告があります。アメリカのCDCでも言及しています。Febrile Seizures Associated with TIV & PCV13

 ただ、書いてあるとおり、熱性痙攣のリスクのために、PCV13とインフルエンザワクチンを別々に接種することは勧められていません。原則同時接種です。

 PCV13とインフルエンザを同時接種しても熱性痙攣を起こさない人も居まし、別々に接種しても熱性痙攣を起こす人も居ます。またどちらを接種していなくても、熱性痙攣を起こす人も居ます(熱性痙攣ならまだいいのですが、細菌性髄膜炎による痙攣だったら…)。

 ワクチンのスケジュールは接種医とよく相談するようにお願いします。

2012-2013 では熱性痙攣のリスクは増えなかった。(2013年10月20日追記)

 2012-2013 Influenza Seasonでは、PCV13とインフルエンザを同時接種しても熱性痙攣のリスクは負えなかったということです。理由は、インフルエンザワクチンの内容が変わったからでしょうか?
http://www.cdc.gov/vaccinesafety/Concerns/FebrileSeizures.html

参考サイト

横浜市衛生研究所:肺炎球菌感染症について

厚生労働省:小児肺炎球菌ワクチンの切替えに関するQ&A

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